大手ビジネスホテルチェーンのアパホテル。2022年には今後の出店計画として広島駅周辺に3施設の開業を発表しました。
ホテル名(仮称) | 客室数 | 開業予定 |
---|---|---|
アパホテル〈広島駅新幹線口〉 | 294室 | 2024年夏 |
アパホテル〈広島駅スタジアム口〉 | 242室 | 2024年秋 |
アパホテル&リゾート〈広島駅前タワー〉 | 600室 | 2026年春 |
これらの施設が開業すると,営業中である「アパホテル〈広島駅前〉」(91室),「アパホテル〈広島駅前大橋〉」(727室)と合わせ5施設1,954室。広島駅周辺ホテルの一大勢力となる予定です。
これを聞いて,
広島駅前がアパホテルばかりになるのでは?
と心配される方も多いでしょう。そこで本稿では,広島駅周辺のホテル勢力を客室数より明らかにします。
2022年と2026年(予想)の広島駅前ホテル客室シェア率
2022年の広島駅から約500m以内のホテル一覧
本稿では広島駅から約500m以内のホテル等(楽天トラベルに掲載されているホテル・旅館・簡易宿泊所など)を広島駅周辺ホテルとして調査します。
対象施設とそれぞれの客室数は次のとおりです。
これらのホテルのうち,客室数が多い「アパホテル」「JR系列ホテル(グランヴィア,ヴィアイン)」「東横イン」と「その他のホテル」に分けて,2022年と2026年(予想)の客室数を見てみましょう。
2022年と2026年(予想)の大手ホテルの客室シェア
広島駅周辺のホテル客室シェアは次のとおりです。
2022年 客室数(シェア率) | 2026年予想 客室数(シェア率) | |
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アパホテル | 818室 (15%) | 1,954室 (29%) |
JR系列ホテル | 652室 (12%) | 1,053室 (15%) |
東横イン | 612室 (12%) | 612室 (9%) |
その他のホテル | 3,216室 (61%) | 3,216室 (47%) |
合計 | 5,299室 (100%) | 6,835室 (100%) |
2022年時点では,アパホテル,JR系列ホテル,東横インの三大勢力が均衡しています。
2024年にはアパホテル2館がオープン。2025年にはJR系列のホテルヴィスキオ広島(400室規模)がオープン[2]。そして,2026年,5館体制となったアパホテルは他のホテルグループを引き離し,全体の29%と首位独走の状態となる予定です。
29%という数字は,ランチェスター戦略を基としたクープマン目標値備考1において「市場に影響を与え,業界によってはトップの位置を確立できる」とされている26.1%を超える水準です。
これからのレジャー・ビジネス需要がどの程度であるかが鍵
アパホテルの経営は現実主義で強(したた)か。例としては,
- 繁忙期などに値段が跳ね上がるダイナミックプライシングを積極的かついち早く取り入れ
- 変形地の活用や客室などの合理化によるコストカット
- 療養ホテルとしての活用時には「食事の補助金について社会通念を超える経費取っているのではないか」という声があった[3]
などなど。営利企業としてみればもっともなやり方ですが,攻めた姿勢に批判を受けることも度々あります。
そして,アパホテルはドミナント(集中出店)戦略でも有名。
強者の猛攻ののちに考えられる最悪のシナリオは,
「他のホテルが客を吸い上げられ疲弊してしまい寡占市場となってしまう。その結果,宿泊価格が高止まりする」
ことでしょう。
アパホテルの名物社長 元谷 芙美子(もとや ふみこ)氏は,本稿で紹介した5施設に加えて広島市内へのさらなる出店についても「チャンスがあればあり得る」とコメントしています[4]。
しかしながら,会長である元谷 外志雄(もとや としお)氏はインタビューの中で,次のようにも述べています。
いわゆる需要が旺盛なところに進出することによって、他の同業のホテル需要を奪わないようにと考えています。
[5]
ホテル業界の事情はわかりませんが,他社を打ち倒すことがベストな方法とは限らないということなのかもしれません。
また,アパホテルが広島市に大きなポテンシャルを感じていることもわかります。
たしかに,数字から見ても広島県の宿泊需要は旺盛です。
観光庁の宿泊旅行統計調査によると,行動制限の影響が出る前の2019年の客室稼働率はビジネスホテルで79.1%(全国9位),シティホテルで85.4%(全国2位)と高い水準となっていました[6]。
注:上記統計は広島”市”ではなく広島”県”のものです。市レベルの統計は見つけられませんでしたが[備考3],今回は県と市で大きく異なるものではないと仮定します。
実際に「全然宿が取れなくて岩国(山口県)まで行ったよー」という声を聞いたこともあります。
この先,広島駅周辺のホテル事情がどうなっていくのか。確実な予想は立てられません。
観光客にとっても,宿泊業界にとっても,良いカタチとなることを願うばかりです。
それでは!
出典・備考
<出典>
[1]アパグループ, 広島駅周辺で本年3棟目のホテル開発計画を発表, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000537.000018265.html (2022.11.6閲覧)
[2]JR西日本ホテルズ, JR西日本ホテルズ 新規ホテル開業計画について, https://www.hotels.westjr.co.jp/news/detail.php?id=252 (2022.11.6閲覧)
[3]朝日新聞社, 【独自】アパホテルがコロナ宿泊療養者の食事代“中抜き”認める 苦情が相次ぎ行政指導も, https://dot.asahi.com/dot/2022030400078.html (2022.11.6閲覧)
[4]中国新聞, アパホテル「広島6施設目もあり得る」 社長、サミット効果など言及, https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/230209 (2022.11.6閲覧)
yahooニュース配信(全文閲覧可) https://news.yahoo.co.jp/articles/83ba11349c28851a0088f73beba9d9cec710f040
[5]株式会社オックスコンサルティング, 【ホテル経営者必読インタビュー】アパホテル代表 元谷外志雄氏が語る、コロナ禍でも揺るがないアパホテルの成り立ちやホテル経営における勝ちパターンとは?, https://www.hotelier.jp/hotelier-feature/keyman-feature/apa_interview.html (2022.11.6閲覧)
[6]観光庁, 宿泊旅行統計調査・平成31年1月~令和元年12月分(年の確定値), https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/shukuhakutoukei.html (2022.11.6閲覧)
<備考>
備考1:2022年のデータは,2022年10月25日時点のものです。楽天トラベルの検索にて「日付未定」「目視で”広島駅”を中心として”地図の中央から半径0.5kmの範囲で検索”」条件にて絞り込んだ宿泊施設について,客室詳細情報に記載されている総部屋数を使用しています。カプセルホテルやドミトリーについては数え方が統一されていない可能性があります。
備考2:主にマーケットシェアの指標として用いられるものであるため,厳密にはホテルの客室シェア率に直接準用できるものではないと思われますが,あくまで一つの観点として記載しています。
備考3:広島市レベルの宿泊統計が記載されている資料としては「広島市観光概況」(2019年度版 https://www.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/116/205363.html)があります。しかしながら,こちらに記載されている情報は「定員稼働率」であるため本記事本文中では採用しませんでした。なお,ダブルルームを一人で利用するなど客室定員以下の人数で宿泊することはあっても,定員を超えて宿泊することはできないため,客室稼働率は定員稼働率より大きくなります。